沖縄県豊見城市翁長にある歯科医院、モリヤデンタルオフィスの院長・歯科医師の森谷良孝です。
「仕上げみがきは、いったい何歳まで続ければいいのでしょうか」。小児歯科の診療で、保護者の方からよくいただくご質問です。結論からお伝えすると、ひとつの目安は小学校高学年(おおむね10〜12歳ごろ)までと考えられています。この記事では、なぜその時期までなのかを、お子さまの手や脳の発達という観点からできるだけやさしく解説します。
仕上げみがきを保護者が続ける目安は、永久歯が生えそろう小学校高学年(10〜12歳ごろ)までと考えられています。これは多くの歯科の現場で語られている目安ですが、全国共通で決められた厳密な医学的な締め切りではない、という点をまず押さえておきたいところです。
実際、歯科の現場や各種の解説でも、仕上げみがきをやめる時期は年齢だけで一律に決めるものではなく、染め出し液などで実際の磨き残しを確かめ、本人にどこまで任せられるかを見ながら判断する考え方が紹介されています。つまり「何歳になったから卒業」ではなく、「自分でどれだけきれいに磨けるようになったか」で見極めていくイメージです。
ここで大切にしたいのが、仕上げみがきの位置づけです。仕上げみがきは「子どもが磨けないから親がやってあげるもの」ではありません。お子さま自身が自分で磨く力を育てている途中で、大人が“磨き残しの最終チェック役”を担う期間、いわば最後の安全チェックであり見守りだと考えると、ご家庭でも続けやすくなるのではないでしょうか。
では、なぜ小学校高学年ごろまでは大人のチェックがあると安心なのでしょうか。その背景には、お子さまの手と脳の発達が関係していると考えられています。ここでは3つの観点に分けてご説明します。
①手指の器用さ(巧緻性)。歯ブラシの毛先を、奥歯の細かい溝や、歯と歯ぐきの境目に、適切な角度と力でピタッと当て続ける動作は、実はとても細かな手の操作を必要とします。こうした微細な運動のコントロールは、学童期になってもまだ発達の途中であることが、発達に関する研究で示されています。字をていねいに書く、細かい工作をする、といった動作が小学校の間も上達し続けるのと同じように、歯みがきの細やかな動きも少しずつ洗練されていくと考えられます。
②脳の“実行機能”。実行機能とは、ものごとを段取りよく進めるための脳の働きで、たとえば「磨く順番を覚えておく」「最後まで注意を保つ」「早く遊びたい・終わらせたい気持ちをぐっと抑える」「磨き残しがないか探して直す」といった力が含まれます。この実行機能に深く関わる脳の前頭前野は、児童期から思春期にかけて発達を続けることが、脳科学の研究で報告されています。だからこそ、小学生のうちは「ちゃんと磨いているつもりでも、注意がそれて一部だけ磨けていない」ということが起こりやすいと考えられます。
③自分で磨き残しを見つける“自己点検”の力。自分の口の中の見えにくい場所の汚れを、自分で気づいて磨き直すのは、大人が思う以上に難しいものです。この力もまだ発達の途中にあると考えられています。さらにこの時期は、乳歯から永久歯への生え変わりで歯の高さがそろわず、毎年のように“磨き方の地図”が変わっていきます。生えたばかりの歯は表面がまだ十分に硬くなっておらず、酸に溶けやすいためむし歯に注意が必要とされています。永久歯はお口の中で少しずつ硬く成熟していくと説明されており、その間はとくにていねいなケアが大切だと考えられています。厚生労働省の情報でも、年齢やお口の状態に応じた歯みがきと、保護者によるお口の中の観察が大切とされています。
ときどき「立体的な空間を捉える力が育たないから仕上げみがきが必要」という説明を見かけることがありますが、これは正確とは言えません。口の中の立体的な形そのものを理解することは、子どもでもできると考えられています。本質はそこではなく、毎日同じ精度で磨き続け、見えない磨き残しを自分で見つけて直す力が、まだ育っている途中だという点にあります。仕上げみがきは、その“育ちきるまで”を支える橋渡しの役割と考えると分かりやすいかもしれません。
ここまで発達の話をしてきましたが、いちばん大切なのは「個人差がとても大きい」ということです。7歳ごろから自分でじょうずに磨ける子もいれば、8歳を超えても手先の器用さによってはサポートがあると安心な子もいます。ですから年齢だけで一律に「もう卒業」と決めてしまうのではなく、ご家庭での染め出しや、歯科でのチェックで磨き残しの状態を見ながら、少しずつ本人に任せていく進め方がおすすめです。
具体的には、月に何回か染め出し液を使って磨き残しを“見える化”し、本人に確かめてもらう。歯科の定期健診でブラッシング指導を受け、磨き方のクセを直す。こうした積み重ねが、自分で磨く力を育てながら、むし歯のリスクも抑えることにつながると考えられます。むし歯予防は歯みがきだけでなく、食習慣やフッ素の活用と組み合わせることが大切です。フッ素の使い方については、関連記事「子どもの虫歯予防にフッ素は効くの?」もあわせてご覧ください。
仕上げみがきを嫌がるお子さまには、その意味を言葉で伝えてあげると、前向きに取り組みやすくなることがあります。たとえば、こんな声かけはいかがでしょうか。
「仕上げみがきは、あなたができないからするんじゃないよ。自分で上手に磨けるようになるための、最後の安全チェック。見えない奥歯まできれいにできるようになるまで、一緒に練習しよう」
このように、できないことを補うのではなく、できるようになるための見守りなのだと伝えることで、お子さま自身も前向きに取り組みやすくなるかもしれません。
仕上げみがきを続ける目安は小学校高学年(10〜12歳ごろ)まで。ただしこれはあくまで目安であり、厳密な医学的な締め切りではありません。手指の器用さ・脳の実行機能・自己点検力がまだ育っている途中だからこそ、大人が“最後の安全チェック役”として見守る——そう考えると続けやすくなります。当院では、お子さま一人ひとりのお口の状態や発達に合わせて、仕上げみがきの卒業時期や磨き方のアドバイスを行っています。小児歯科の診療内容はこちらをご覧ください。また、お子さま連れでも通いやすいよう、託児施設のご案内もしています。仕上げみがきの卒業時期に迷ったときは、どうぞお気軽にご相談ください。
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この記事はモリヤデンタルオフィス 院長・森谷良孝が監修しています。歯学博士。予防を重視し、お子さまのお口の健康づくりや口腔機能の発達支援に取り組んでいます。※お子さまのお口の状態や発達には個人差があります。具体的にはかかりつけの歯科医師にご相談ください。
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