沖縄県豊見城市翁長にある歯科医院、モリヤデンタルオフィスの院長・歯科医師の森谷良孝です。
「最近よくむせるようになった」「食べこぼしが増えた」「滑舌が悪くなった気がする」——ご本人やご家族から、こうしたお話を伺うことが増えました。これらは加齢のせいと見過ごされがちですが、「オーラルフレイル(お口の機能の衰え)」の初期サインであることがあります。早く気づいて適切に対応すれば、進行を防いだり遅らせたりできる場合があります。
オーラルフレイルとは、噛む・飲み込む・話すといったお口の働きが少しずつ衰えていく状態を指します。「フレイル」は健康と要介護の間の段階のことで、お口の衰えは全身の衰えの入り口になると考えられています。多くの場合、はっきりとした自覚がないまま少しずつ進むため、ご本人もご家族も気づきにくいのが特徴です。一方で、オーラルフレイルは早めに気づいて対応すれば、改善が期待できる場合もある「可逆的」な段階だとされています。だからこそ、小さなサインのうちに気づくことが大切だと考えられています。
次のようなことが増えていないか、振り返ってみてください。食事中にむせる/硬いものが食べにくくなった/食べこぼす/滑舌が悪くなった/口が乾く/薬が飲み込みにくい——。こうした変化は、どれも日常のなかで「年のせい」と片づけられやすいものばかりです。たとえば、以前は問題なく食べられていた食材を自然と避けるようになった、食事に以前より時間がかかるようになった、といった点も振り返りの手がかりになります。一つでも当てはまるものが続くようなら、お口の機能を一度チェックすることをおすすめします。気になる場合は、ご自身の感覚だけで判断せず、ご家族の気づきもあわせて確認しておくと安心です。
こうした初期のサインは、ご本人よりもむしろ一緒に過ごすご家族のほうが気づきやすいことがあると言われています。ご家族が見守るときの観点としては、たとえば「食事中にせきこんだり、むせたりする回数が増えていないか」「以前は好んで食べていた硬いものや繊維の多いものを残すようになっていないか」「会話の聞き取りづらさや、話すときのもつれが増えていないか」「口数や、人と食事をする機会そのものが減っていないか」といった、日々の様子の小さな変化が手がかりになると考えられています。これらはあくまで気づきのきっかけであり、当てはまるからといってすぐに病気と決まるものではありません。ただ、複数が重なって続くようであれば、一度お口の状態を確認しておくと、より早い段階での対応につながりやすいとされています。
お口の機能が衰えると、やわらかいものばかりを選ぶようになり、栄養がかたよりがちになります。噛む力・飲み込む力の低下は、低栄養や、食べ物が気管に入って起こる「誤嚥性肺炎」のリスクにつながると考えられています。また、滑舌の衰えや食べこぼしが気になって人と食事をする機会が減ると、外出や会話そのものが減り、心身の活力の低下につながることもあると指摘されています。お口の健康は、全身の健康と食べる楽しみを支える土台です。お口に合った入れ歯でしっかり噛めることも大切で、入れ歯と噛む力については入れ歯が「痛い・合わない・外れる」原因と対処法の記事でもくわしくご紹介しています。
一般論として、お口の衰えは一つの問題にとどまらず、いくつかの変化が連鎖していくことがあると言われています。たとえば、むせや食べこぼしが気になって外で食事をしづらくなると、人と一緒に食べる「共食」の機会や外出・会話が少しずつ減っていく——こうした人とのつながりや活動の広がりが小さくなる状態は「社会的フレイル」と呼ばれることがあります。社会的なつながりが細ると、食事の内容が簡単なものに偏ったり食欲そのものが落ちたりして、結果的に低栄養に傾きやすくなる面があると考えられています。そして低栄養は筋力や体力の低下を通じて、全身のフレイルをさらに進めうるとされています。お口・食事・人とのつながり・栄養は互いに影響し合うため、どこか一か所の小さなつまずきを早めにほどいておくことが、この連鎖を断ちやすくすると考えられています。
ご家庭では、よく噛んで食べることを意識する、口まわりや舌を動かす簡単な体操(「あいうべ体操」など)を習慣にする、しっかり水分をとる、といったことから始められます。あいうべ体操は、「あー」「いー」「うー」「べー」と口や舌を動かすだけの簡単なもので、テレビを見ながらなど、すきま時間に取り入れやすいと言われています。回数や強さは無理のない範囲から始め、痛みや違和感があるとき、持病やお口の治療中の方は、あらかじめ歯科医師にご相談ください。毎日の歯みがきに加えて、舌や頬を動かすひと工夫が、お口の機能を保つことにつながると考えられています。続けやすいタイミングを決めて、習慣として無理なく取り組むことが大切です。
あいうべ体操の具体的な動かし方は、おおむね次のような流れが紹介されています。まず「あー」と口を大きめに開き、次に「いー」と口を左右に広げ、続いて「うー」と口を前に突き出し、最後に「べー」と舌を下に向けて伸ばす——この四つを一つの区切りとして、声は出しても出さなくてもかまわないとされています。一般的には一回につき数回ずつ、一日に分けて合計三十回ほどを目安に、食事の前など決まった場面で行うと続けやすいと言われています。ただし、これはあくまで一般的な目安で、動かす大きさや回数は無理のない範囲にとどめてください。とくに、あごを開けると痛む方や顎関節に不安のある方、顎関節症と言われたことのある方は、大きく口を開く「あー」や舌を強く出す「べー」で関節に負担がかかることがあるため、これらは控えめにし、関節への負担が少ない「いー」「うー」だけを行う方法もあります。あごや首・肩に痛みのある方、高血圧などの持病がある方、入れ歯やお口の治療を受けている最中の方も同様に、はじめる前にかかりつけの歯科医師にご相談いただくと安心です。途中で痛みや違和感が出たときは、その場で中止してください。体操は「たくさん・強く」よりも「無理なく・毎日少しずつ」続けることのほうが大切だと考えられています。
当院では、噛む力や舌の動き、飲み込みの状態を確認し、お一人おひとりに合ったトレーニングや、合わない入れ歯の調整などをご提案します。お口の状態を把握したうえで、ご家庭で続けやすいケアの方法を一緒に考え、必要に応じて定期的に確認していくことで、変化に早めに気づきやすくなります。合わない入れ歯でお困りの方は、入れ歯(義歯)治療のご案内もあわせてご覧ください。通院が難しい高齢の方には、ご自宅にうかがう訪問歯科診療でお口の状態を確認することもできます(訪問歯科診療の対象となるかは、お身体の状態や通院の難しさなどを確認してご案内します)。お口の機能を保つことは、長く自分の口で食べ続けるための予防的な取り組みです。
はじめてご来院いただいた際の大まかな流れとしては、まず気になっている症状やふだんの食事の様子、これまでのお口の治療歴などをお伺いします。そのうえで、歯や歯ぐき、入れ歯の状態に加えて、噛む力・舌や唇の動き・飲み込みのしやすさといったお口の働きを、できる範囲で確認していきます。確認した内容をふまえて、ご家庭で取り入れやすい体操やケアの方法をご説明し、入れ歯が合っていない場合には調整のご提案をすることもあります。お口の機能は一度確認して終わりではなく、季節や体調によっても変わりうるため、必要に応じて定期的にチェックの機会を設けることで、小さな変化に早めに気づきやすくなると考えられています。どのくらいの間隔で確認していくとよいかは、お口や全身の状態によって一人ひとり異なりますので、その方に合わせてご相談しながら決めていきます。
「年だから仕方ない」とあきらめず、気になるサインがあれば早めにご相談ください。当院は老年歯科・口腔機能の分野に力を入れており、ご本人にもご家族にもわかりやすくご説明します。お口のことは何から相談してよいか迷われる方も多いので、気になる症状やふだんの食事の様子をメモして来ていただくと、よりスムーズにご相談いただけます。
お電話でのご相談:098-850-3239
この記事はモリヤデンタルオフィス 院長・森谷良孝が監修しています。歯学博士。日本老年歯科医学会で研鑽し、高齢の方のお口の健康づくりに取り組んでいます。※症状には個人差があります。気になる症状が続く場合は、歯科医師・医師にご相談ください。
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